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本の紹介「ルポ・日本生物多様性」

「ルポ・日本生物多様性」平田剛士著、地人書館、2003年3月、ISBN4-8052-0727-2、1800円+税


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【河上康子 20030627】
●「ルポ・日本生物多様性」平田剛士著、地人書館

 1964年うまれの若いルポライターによる、生き生きとした文章と丹念な取材に基づく好感の持てる著作。北海道のウミガラスやイトウ、沖縄のジュゴンなど、日本各地で絶滅に瀕する野生生物の保全や、ブラックバス・ ブルーギルなど移入種が及ぼす在来生態系への影響の対策に、果敢にかつ科学的に取り組む人々の姿を描く。終章では、日本のお手本となりうる例として、ニュージーランドでの国をあげての移入種対策と保護管理のシステムを紹介している。日本の野生生物のおかれた厳しい現状を冷静に紹介しつつ、なお、決して悲観論におぼれず地道に活動を続ける人々と、それを伝える著者の姿に共感と感動を覚える。
 
 お薦め度:★★★★  対象:日本の野生生物保護に関心のあるひと一般

【早川友康 20030627】
●「ルポ・日本生物多様性」平田剛士著、地人書館

 本書では沖縄にある世界最北のジュゴンの生息地で持ち上がった米軍基地移設計画や最近減少傾向にあるカヤネズミを題材とした総合学習をする活動、琵琶湖におけるブラックバス・ブルーギルによる在来魚の食害に対する問題。北海道の直線化された川を再び蛇行させて生物多様性復活させようという取り組み。かつて移入種によって生態系がめちゃめちゃに破壊されたニュージーランドの生態系復活の取り組み等を国内だけにとどまらず、海外の話題もふまえて生物多様性の保全と再生に挑む人々の活動を紹介している。
 
 お薦め度:★★★★  対象:自然に興味のある人


【和田岳 20030627】
●「ルポ・日本生物多様性」平田剛士著、地人書館

 「エイリアン・スピーシーズ」に続く、著者3冊目の本。移入種問題だけを取り上げた前作とは異なり、生物多様性を脅かすさまざまな問題を取り上げている。現場で問題に取り組んでいる人に同行し、その活動を臨場感あふれる文章で報告している点は、前作と同じ。取り上げられた問題には、移入種問題の比重が高いが、その他、海鳥の漁業での混獲、沖縄のジュゴン、自然河川の復元、北海道のシカやヒグマの個体群管理、高山植物の盗掘と幅広い。最後のルポでは、ニュージーランドの移入問題への対策が紹介されている。
 全体を通じて、生物多様性を維持するには、あるいは再生させるにはどうしたらいいか、という事が問いかけられている。生物多様性がどんどん減少する一方だった日本で、今どんな試みがなされているかを知ることができるだろう。
 
 お薦め度:★★★★  対象:自然に多少なりと関わりがある人すべてに


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